システム開発会社がお寺関連のサービスを、と聞くとかなり特殊な気がしますが、お寺プラスを企画することになった経緯や、眞川さんが開発に関わることになったきっかけをお聞かせください。
眞川
実際「ご実家がお寺関係なんですか?」と聞かれたことはありますね。
実家が寺というわけではないのですが、私の実家はかなり田舎(過疎地域)で、祖父祖母は毎日仏壇に手を合わせたり、法要の際は親戚や近所の人たちが集まったりと、お寺というものが昔から身近な存在で、家族を繋いでくれているようなイメージを持っていました。
そんな環境で育ったからなのか、寺離れが進んでいる昨今の状況に、なにか寂しさのようなもの感じていて、何かお寺のお役に立てるサービスを企画できないか?と常日頃考えていました。お寺と所属寺を持たない方をWEB上でマッチングするサービス等々、色々企画してみたりしましたね。
そんな時に、すでにお付き合いのあったお寺の方から「紹介したい人(お坊さん)がいる」と話を持ちかけてくださったのが、お寺プラスを企画するきっかけです。
堀内
眞川
そう。でも、お寺の方々に色々と相談してみた結果、「これは難しいかな」と思っていたところで、お寺プラスの原型となるシステムのご相談をいただいたんです。
相談してくださったのはお寺の現状を危惧されている若いお坊さん(以降「開発パートナー」)でした。
最初に、そのお坊さんからご相談内容をヒアリングさせていただいてびっくりしたのが、自分の考えていたものよりもっと基礎的な部分でお寺さんが悩んでいた、ということ。
顧客管理(お寺の正解では檀家管理)のデジタル化なんて、ビジネスの世界では当たり前にしていることなので、やはり実際のお客様の声を聞かないとだめだなぁと感じた記憶があります。
開発パートナーとの共同開発はどのように始められたんですか?
眞川
最初にお話したときの要望は、「出先でも簡単に檀家情報などを確認できるスマホアプリを作りたい」ということでした。
檀家管理システムはいくつもあるけれど、どうしても古臭いし、PCでしか利用できないので、出先で使えない。
そういった不満が若手のお坊さんを中心に少なからずあり、外出先でも檀家さんとの過去のやりとりや情報を閲覧できることで、お坊さんのサービス品質を高められる!今の時代はスマホでそのようなことができるべき!というお考えでした。
当初は受託開発を希望されていたのですが、前述のとおり、コギトとしてお寺の役に立つサービスを提供したいという想いがあったので、コギトの自社プロダクトとして開発したい!そのほうがより使い勝手の良いものにできる!とお伝えして、コギト自社サービスとして開発をスタートするに至りました。
堀内
もともと開発パートナーがお考えだったと聞きましたが。
眞川
実際のところ、私がクラファン実施に賛同した理由は、「お寺プラス」というアプリや我々の構想に、どれだけの方が賛同くださるのか、というプレマーケティング的な意味合いが大きかったですね。
結果、2週間もかからずに目標金額に到達し、一定の反響があると客観的に判断できたのは開発を進める大きな後押しになったと思います。
開発に関して苦労されたところは?
眞川
開発に関しては、開発パートナーと私とで重視したポイントは、主に下記4点でした。
- 日常使いはスマホアプリがメインになる。だからスムーズな操作性が重要。
- いわゆるサブスクリプション型でサービス提供し、契約更新・利用料の決済はすべて自動化させる
- 無料でのお試しプランを用意する
- 全国のお寺さんに広く使ってもらえるよう、圧倒的な低価格での提供を目指したい
このあたりを重視しながら、仕様や価格に関してのベースの部分を詰めて、具体的なイメージを私が作成、開発担当へ伝える…という形で進めていきました。
一番大変だったのは、決済サービスの仕様決定ですね。
お寺プラスをきっかけにコギトはサブスクリプションサービスを取り扱うことになったので、私も開発も初めて触れるサービス。契約周期の変更(「月払い」⇔「年払い」)や契約期間中でのプラン変更(アップグレード、ダウングレード)等々、あらゆる可能性を洗い出して「こうしたい」というマトリックスを組んで開発に提示しました。
できるだけ利用者にやさしいプランにしたいとの考えから色々と調整したのですが、まずそのマトリックスを組むのが難儀で…。
さらには開発とのやりとりの中で「やっぱりこれはできません」となると、また組みなおし…みたいな事態になったり。
全体の仕様を詰めるよりも、それが一番骨が折れました。
堀内
画面デザインも結構こだわっているというか、洗練されたイメージでお客様からも評価いただいてますよね?
眞川
檀家管理システムの「古臭さ」「悪い意味でのお寺っぽさ」を払拭して「イマドキの感じ」にしたいと思って。
通常の開発では、私がPowerPointで1画面1画面のイメージを作成し、それをもとに開発へ依頼するのですが、お寺プラスに関しては「私のPowerPoint原画」をもとにしてデザイナーに「正式な依頼デザイン」を作成してもらい、そこにボタンを押したときの挙動を付け加えて依頼しました。
二度手間ではありますが、これで洗練されたデザインかつ、開発側に伝わりやすい資料ができたのではと思います。
堀内
以前在籍していたデザイナーが作成したのですが、「お寺とご縁をつなぐ」というコンセプトで「結ぶ」や「円(丸)」をイメージした上で、親しみやすさやアプリとしての手軽さを表現したと聞いています。
アプリ開発当初から、単なる寺務管理ツールではなくお寺と檀家とのコミュニケーションツールへと進化させるという構想があるからこその発想だと思うので、お寺プラスの象徴として非常に良いなと手前味噌な考えではありますが、感じています。
眞川
良くも悪くも「システム会社」なので、そのあたりの期待値はそこそこといった感覚だったと思いますが、いわゆるイマドキのロゴがあがってきたのと、その仕上がりに非常に喜んでくださった記憶があります。
お寺プラスのリリース後の反響はいかがでしたか?
眞川
堀内
あと、「お坊さんが発案者のツール」というところに共感を持っておられる印象が強いです。
クラファン賛同者のお坊さん達から機能についての意見を募って「現役のお坊さんが求めるツール」に名実ともにできたのが大きかったのではないでしょうか。
眞川
だからこそ、WEBサイトで強調している「受動的なままではお寺は存続できない。檀家さん=顧客と捉えてサービスをしていくべき。」という考え方には「その通り!」と言ってくださる方が多いのだと思います。
お寺プラスの展望について教えてください
眞川
今まで多くのお坊さんや関係者とお話させていただいてきましたが、「寺離れ」問題は深刻で、どの寺も対峙せざるを得ない状況なんですよね。
他のお客様とお話してもそうなのですが、「こういうシステムがあったらその問題は解決するな」なんて会話しながら思うことが多いんですが、システム会社だから・民間企業だから気づく解決策って結構あると思うんです。
単に今お困りのことだけでなく、未来のあるべき姿に向かって我々は何ができるのか?という目線を常に持ちながら、今後も取り組んでいきたいと思います。
堀内
墓じまい、家族間のコミュニケーションなどなど…。
最終的に大きなプロジェクトになりそうで、楽しみですね(笑)。
眞川
我々のできる方法で社会に少しでも貢献できるよう、試行錯誤しながら進んでいきたいですね。